不況でも売れるモノ
不況と言われて何年が経つだろう。
好景気になる予兆などなく、この苦しい状況を、各社が戦略や工夫で乗り越えているのが、世の中の大きな流れだ。
この不況で生き残る術とは何であろうか。
私は、オリジナルを作り出す力だと考える。
コロンブスの卵に代表されるように、簡単なことでも初めに挑戦することは難しい。
誰もしたことがない、考えたことがない、意表をつかれるようなアイディアとそれを実現する力。
それが生き残りの鍵と考える。
ただ、言うは易し行うは難し。
アイディアというものは考えているときは浮かばない、とも言う。
関係のないことをしているときにひらめく、という話もよく聞く。考えすぎるのではなく、一歩引いてみるということも大事なことなのかもしれない。
消費者には低価格の商品を求める傾向がある。
しかし、価格だけで勝負をするのではなく、付随するアイディアが、生き残りの明暗を分けるのではないだろうか。
ナンバーワンの低価格より、オンリーワンの技術力。
その鍵となるのは、誰も思いついたことがないアイディアだ。
価格戦略は、大抵が価格を下げるだけの何のアイデアもない手段で、これは利益を圧迫するだけ意味が無い。
安売りは信頼性を築き難くするものであり、適正価格でより以上の品質で勝負することが、技術力ある中小企業の生きる道である。
売上を景気のせいにする経営者だけにはなりたくないもの。
近江商人
先日、「近江商人」についての本を読みました。鎌倉時代から江戸時代にかけて琵琶湖周辺を本拠地とし、天秤棒を担いで他国商いを行っていた方々のことを指すそうです。彼らは、どんな不況が訪れたとしても、乗り越えていくことができる企業集団を作り上げることに成功しました。
現在も日本経済を支えている老舗企業、トヨタ、丸紅、伊藤忠商事、高島屋などは近江商人の流れを汲む代表的な企業です。彼らは、本拠地である近江から、天秤棒を担いで他国に赴き、麻布などの近江の名産品を売り歩いていたそうです。
商売が成功すると、その地域に店を出店し、現地の人の声に耳を傾け、需要の高い商品を全国から仕入れて商いを行っていました。よそ者である近江商人が各地で受け入れられるためには、顧客や地域社会から信頼を得る必要があったので、彼らは売り手本位の商いを禁じていました。
このような経緯から生まれたのが、「売り手よし、買い手よし、世間よし」と
いう、彼らの経営理念である「三方よし」という考え方です。売り手の都合だけで商いすることを禁じ、買い手が心の底から満足できるサービスを提供すること、さらに事業活動が地域社会の発展や福利の増進に繋がることまでを、彼らの使命としていました。
その結果、彼らは地元の人から信頼を勝ち取り、業績を伸ばすことができたのです。顧客や地域社会を第一に考える利他の経営を貫くことで、組織も強くできることを近江商人は見抜いていたようです。